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「待たせる」ことで価値が上がる世界がある

経営者スピリッツ

「待たせる」ことが価値になる。

 

こんな魔法のような魅惑の世界があります。

ラグジュアリーブランド企業です。

 

フェラーリ、エルメスなど、商品を手にするまでお客様を長期間「待たせる」事業。

しかも、ぶっ飛んだ高価格にもかかわらず。

 

我らが運送業界とは月とスッポンです。

 

待たされることはあっても

待たせることなくすぐ運搬し、納期も厳守する日本の運送サービス。

しかしながら価格(運賃)は著しく低いままです。

 

もちろん、ラグジュアリー事業とトラック運送事業を

単純に同じ土俵で比較しても意味がありません。

 

ただ、ラグジュアリー企業でも過去に失敗事例があることを知っておくことは

運送経営者といえども参考になる点があります。

 

例えばティファニーやコーチ。

若い人にも買ってもらい、販売量を増やそうと低価格帯の商品を売り出したのです。

当初は目論見通り、売れに売れました。

ところが、やがてとんでもない事態に陥ったのです。

 

今まで長い間購入し続けてくれた上得意客が離れ始めたのです。

 

価格を下げたことで売上事態は上がったのですが

上得意客が買わなくなりはじめたのです。

 

 

「いつでも誰でも買える、ありふれた商品(サービス)なんて、高いお金を出すだけの価値はない」。

そう思われたからでしょう。

しかし、この点こそが「価格」の秘密なのです。

 

話を運送業界に戻しましょう。

 

大手宅配業者が大手通販業者の仕事を一部撤退することを決めました。

当初は低運賃でも大きな売上が見込めるからよいだろう、と始めた業務。

 

ところが、実際はドライバーが過労に次ぐ過労となるブラック業務。

内部告発や裁判沙汰になり、ついにギブアップ!

 

売上は上がったが、ドライバーの士気が大きく下がってしまいました。

 

安い運賃で荷主に迎合し、一時売上が上がったところで、

ドライバーの労働環境が悪化し、辞められてしまえば元の木阿弥では済まないでしょう。

 

巨額の未払い残業代やドライバーの過労問題というオマケつきです。

 

もちろん、運送会社にとってお客様(荷主)は大切です。

ところが、お客様は「いつでも誰でも買える、ありふれたサービス」だから

高い運賃は払いたくない、と内心思っているのです。

 

本当に運送サービスは

「いつでも誰でも買える、ありふれたサービス」なのでしょうか?

 

大手宅配業者は値上げを決定し、配達時間帯も一部削減に踏み切りました。

果たして値上げになったからと宅配業者に依頼しなくなるでしょうか?

 

大手運送会社だけではなく、安い運賃にNO!といえることが、

これからの中小運送会社にも必要です。

 

では、なぜNO!と言えないのでしょうか?

 

“NO!と言うための何か”が自社に足りないからです。

 

経営者の言う気(勇気)が足りないのか?

ドライバーの品質に自信がもてないからなのか?

配車マン、営業マンの交渉能力が足りないからなのか?

 

運送業界も荷主を「待たせる」くらいの演出をしてもいいかもしれません。

 

今回の運送会社の社長の2つの選択。

 

値上げから顔を背けて、音を上げてしまうのか?

値上げをするために会社の改革に挑み続けるのか?

 

自社の価値(運賃)を上げるのは社長の心意気にかかっていますね。

 

 

 

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

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