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危機意識が崩壊する運送会社の兆候

経営者スピリッツ

「しまった。あの時、改善しておけばよかった」。

 

死亡事故を起こしてご相談にきた

ある運送会社の社長さんから思わず出た言葉です。

 

実は死亡事故を起こした4ヶ月前に

適正化事業実施機関の巡回指導を受けていました。

 

健康診断の未受診、

初任診断や適齢診断の未受診、

安全教育の未実施、

拘束時間など乗務基準違反

の改善を指摘されていたようです。

 

指摘事項に関する「実施計画書」を改善報告として

適正化事業実施機関に提出したまではよかったのです。

ところが、残念なことに計画通りに実行していなかったのです。

 

その矢先の死亡事故です。

 

もし巡回指導の指摘事項を改善していたなら、

運輸監査の心配など不要になっていたかも、と思ってしまいます。

 

今まで重大事故や悪質違反で国土交通省の監査に入られた運送事業者さんを見てきて思うこと。

 

それは、重大事故以前に1、2回は改善するチャンスがあったということです。

 

人間とは弱いもの。

1回目の監査ではビビっているのですが、

2回、3回となると慣れっこになってくるのです。

 

「前も割と法令違反していたけど、たいした行政処分や刑事処分にならなかった。

だから今回もあまり大げさに考えなくても大丈夫かな」

 

おおよそこんな感じでしょうか。

徐々に安全に対する意識が薄れていってしまうのです。

 

例えば「1ヶ月の拘束時間」についても徐々に麻痺していきます。

1回目の監査では、例えば1ヶ月330時間で、法定の293時間を大きく逸脱していた場合、

重大事故を起こし相当びびっています。

ところが、運良く行政処分や刑事処分が軽めでおわってしまった時。

 

その時、「慣れ」という名の変な自信を持ち始めるのです。

 

そうなると、1ヶ月の拘束時間が350時間超になっても、

「これくらいなら大丈夫だろう」

「他の運送会社だって違反している」

「年度末や年末だから仕方ない」

と、どんどん安全意識が低くなっていきます。

 

低い安全意識のままであれば、

わずか数年で、過労運転だらけの運送会社が見事に出来上がります。

 

不幸の女神もこの時期に合わせてやってきます。

死亡事故です。

数年間、じっくり煮込んだ違反だらけの状態ですから、

特別監査が入れば「営業停止」になる可能性が相当高いでしょう。

 

経営していると次々といろんなことが起こります。

一見、嫌だなと思えることでも

そのすべてを「よくなるためのキッカケ」と解釈すれば、

この世も、運送業もまんざら捨てたものではありません。

 

巡回指導を幸運の女神の助言と解釈するか、

小言を言ってくる疫病神と解釈するか。

たとえ耳の痛いことでも前向きに対処できるのが成長し続ける社長ですね。

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

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