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“持病の悪化”でドライバーが死亡、いったい誰の責任?

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持病の悪化は誰の責任?

運送会社が実施する健康診断結果で
“異常あり”が多いのは「高血圧」です。

しかし、高血圧のドライバーの対策をとっている運送会社は少ないようです。

たかが「高血圧」と思いがちですが
高血圧から脳、心臓疾患を発症する確率は相当高いです。

運が悪ければトラックを運転中に発作を起こし、
重大事故の発生、という最悪のシナリオも考えられます。

先日発表された厚生労働省の統計でも、
脳、心臓疾患による労災認定件数がワースト1だったのが
運送業なのです。

1ヶ月の時間外労働時間が
80時間超(2〜6ヶ月平均)または100時間超の状況であった場合(単月)。

もしドライバーが脳、心臓疾患を発症したら、
労災認定される可能性がかなり高くなります。

昨秋、九州の運送会社のドライバーが
業務中に死亡した事件の判決が出ました。

“高血圧の治療中だった”ドライバーが、
いつも通りトラック内で食事をし、仮眠していたところ、
同僚に意識不明の状態で発見され、
救急搬送されたが死亡した事件が発生しました。

この事件で遺族が労災申請をしましたが、
労災認定されなかったのです。

そこで、処分の取消を求めて遺族が国に対して裁判を起こし、
逆転判決で労災認定されたのです。

この裁判の焦点は1つ。
死亡原因が、
業務上(過重労働)か、
単なる持病の悪化なのか、です。

果たして裁判官はどう判断したのでしょうか?

「ドライバーの死亡は、
 本人が発症前に従事していた過重な業務によって蓄積された疲労が、
 本人にもともと存在していたリスクファクター(持病である高血圧等)と相まって、
 本人の健康状態をその“自然の経過を超えて”著しく増悪させ、
 その結果として生じたものと認めるのが相当である」

要約すると
「過重労働が主な原因で、
 持病の高血圧の悪化するスピードが早まったことで
 心臓発作を起こし死亡した」
ということです。

この判決によると
ドライバーの持病であっても、

時間外労働が1ヶ月80時間以上の場合、

1日の拘束時間が13時間超、
1ヶ月の拘束時間293時間超の場合、

過労が原因で悪化して死亡した、
と判断される可能性が高いことが分かります。

この判決を受けて運送会社として今すぐ実施すべきこと。

それは

1.健康診断結果で“異常あり”のドライバーの抽出。

2.1ヶ月の時間外労働が80時間以上のドライバーの抽出。

3.上記1、2の両方に該当するドライバーの抽出。

です。

そして上記3に該当するドライバーに対する対策として

a.1ヶ月の時間外労働を80時間未満にすること。
(裁判では平均81時間前後で恒常的な長時間労働を強いられていた、とされました)

b.1日の拘束時間を13時間以内にすること。
(裁判では1ヶ月を通しておおよそ13時間超14時間前後でしたが、
 疲労を回復するのに十分ではなかった、とされました)

c.1ヶ月の拘束時間を293時間以内にすること。
(裁判では295時間でも問題あり、とされました)

の3つに着手することです。

すべてを一気に改善することは難しいでしょう。

ただ、1ヶ月の時間外労働であれば
80時間未満の月を増やすことはできます。

1日の拘束時間も13時間以内の日を増やすこともできるでしょう。

1ヶ月293時間以内の月を増やすこともできるはずです。

ドライバーの持病の悪化の予防措置。

これからの運送会社の安全配慮義務の1つですね。

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

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