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毒にも薬にもなる「荷待ち時間」の記録!

時間外労働時間

荷主都合による「荷待ち時間」の乗務記録への義務化。

 

ドライバーの過労運転防止のために2017年7月に改正されました。

 

国土交通省が、荷主に対して

荷待ち時間を減らすように勧告を発令していくための証拠作りです。

 

荷主都合の場合のみですので、それ以外の場合は記載不要です。

よくある延着を避けるために早めに到着して待つ場合は記載不要になります。

 

乗務記録への要不要、すなわち「貨物自動車運送事業法上」はこれでよいでしょう。

ただ、運送経営上はそう簡単な話ではありません。

 

時間外労働時間の問題です。

「荷待ち時間」=「労働時間」ですから

荷待ち時間が増えれば、時間外労働時間も増えます。

 

乗務記録のように、荷主都合か自社都合かは関係ありません。

荷待ち時間であれば、オール労働時間。

 

先日発表された厚生労働省の統計でも

トラックドライバーがワースト1の過労死認定件数。

 

平均1ヶ月80時間超が過労死認定基準です。

そうでなくても、数年以内にトラックドライバーの時間外労働時間は

1ヶ月80時間以内になる見通しです。

 

今後も80時間超であれば基本、労災認定の流れになることでしょう。

荷待ち時間の問題は、労災と切っても切れない関係があるというわけです。

 

ここで問題が発生します。

鶏が先か卵が先か、という問題です。

 

すぐに荷主が荷待ち時間の改善をしてくれるのであれば問題なし。

ところが、実際には時間がかかります。

 

改善までに時間がかかるのであれば、

運送会社にとっては労災リスクを高めてしまうことになりかねません。

 

なぜなら、荷待ち時間は運送会社にとってグレーゾーンだからです。

 

厳密に言えば「荷待ち時間」だけれども、実際は「休憩」にしている。

そんな運送会社が多いのではないでしょうか?

それでも1ヶ月80時間未満にするのにてんてこ舞いの状況です。

 

それが今回の改正で、

厳密に荷待ち時間を乗務記録に記載したとしたらどうでしょう。

 

運送会社にとっては自ら首を絞めることになりはしないか。

自らが労災認定の証拠作りをすることになってしまうのではないか。

この点を非常に危惧する社長さんは多くいます。

 

ただ、そうはいっても今回の改正を

運送業経営に活かさないともったいないのは確かなこと。

 

「抑止力」という観点で捉えると別の活用法が見えてきます。

荷主と交渉するために使うカード、と捉える見方です。

 

「荷主都合の荷待ち時間を改善しないと荷主名が公表されますよ」

という発射するかどうか分からない(協力要請書や警告書は今後増えると思われるが)ミサイルを

荷主にチラつかせながら労働環境の改善(運賃値上げも含む)を図っていく交渉材料。

 

そう捉えた方が現実的ではないでしょうか。

 

もちろん、荷主の勧告で社名公表された事例が1件でも出れば、当然、有効活用するべきです。

 

プラシーボ効果(偽薬でも効くと思い込ませればある程度の効果があること)でもいいから、

いかに上手く荷主に新薬(今回の荷待ち時間の規制)を飲ませることができるか。

 

ここが最大のポイントではないでしょうか。

 

自社の首を絞める体調不良の薬にしてしまうのか。

荷主の協力を得て、体質改善の薬にできるのか。

 

とにもかくにも「荷待ち時間」。

この数年間のキーワードになりそうですね。

 

 

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

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