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「病気だから無罪」とはならない自動車事故

疾病運転

「被告が血糖値をこまめに測定していれば事故は防ぐことができた」。

 

糖尿病の持病を持つドライバーに対する判決内容です。

 

事故は約2年前、2014年6月に発生しました。

運転していたのは65歳の一般男性ドライバー。

 

大阪の繁華街を運転中、突然、意識障害に陥り、乗用車を暴走させ、

3名が傷害を負う事故を起こしたのです。

 

意識障害を起こす前、男性は低血糖症状を自覚していました。

ところが、どら焼きとオレンジジュースを飲んだ後、

昼食をとるためにすぐに運転を再開してしまったのです。

 

その1時間前後で、悲劇は起こりました。

 

その日は仕事が忙しく、午後3時まで昼食をとることができなかったこと。

これが、低血糖症状を起こした原因だったのです。

 

注目すべき点は、起訴された罪名です。

「危険運転致傷」と「過失運転致傷」の2つの罪です。

 

「過失運転致傷」は自動車事故で人身事故を起こした場合のお決まりの罪です。

 

「危険運転致傷になるかどうか」。

今回の裁判での最大の注目ポイントでした。

 

「危険運転致死傷罪」になる1つのケース。

それは、「正常な運転に支障を及ぼす恐れがある病気」の影響により、

“正常な運転が困難”な状態に陥って死傷事故を起こした場合です。

 

「正常な運転に支障を及ぶす恐れがある病気」。

この中に「低血糖症」があるのです。

 

今回のケースでは、低血糖症により

“意識障害を起こすことを認識していたか”が焦点になりました。

 

「事故前3年以内で意識障害を発症していない事実から、

低血糖症状になることは認識できても、意識障害に陥ることまでは認識できなかった」

 

これが裁判所の判断でした。

危険運転致傷罪は見送られ、

過失運転致傷罪による1年6か月の禁錮(執行猶予3年)の有罪判決。

 

ただ、判決の中で

「こまめに血糖値を測定していれば事故は防げた可能性があった」

と被告の注意義務に非があったことを指摘されています。

 

一般ドライバー、しかも65歳の高齢ドライバーに対してこの厳しさ。

いわんやプロドライバーをや。

 

プロドライバーであれば、健康管理に関して高い意識を求められます。

当然、それを管理する運送会社、中でも運行管理者に対して民事責任のみならず、

刑事責任を問われることも出てくるでしょう。

 

平均年齢45、6歳のトラックドライバー。

何の持病もないドライバーの方が少ないでしょう。

人材不足の運送業界で40、50代のドライバーは貴重な戦力です。

 

持病ドライバーの健康管理。

今や運送会社全体で取り組むべき重要事項ですね。

 

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

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