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名言に学ぶ運送会社の危機管理(第1回)

物流ニッポン

「習慣」が変わると「運命」が変わる。

 

非暴力、不服従で有名なインド独立の父、マハトマ・ガンディーの言葉です。

 

職業柄、数多くの運送会社を観察してきて思うこと。

それは、成長している運送会社には必ずと言っていいほど“良き習慣”がある、とういうことです。

 

たった1つの“良き習慣”で運送会社はみるみる好転していくのです。

1つ定着したら、また1つ“良き習慣”をつくる。

あとはこの繰り返しです。

 

例えば、労働時間改善のための会議。

ひたすら毎月1、2回実施し、

どのドライバーがどんな違反を何件しているかをチェックし、

配車計画の見直しをします。

 

ある運送会社は「連続運転時間の中断」をゼロにする、という目標を掲げました。

ドライバーに連続運転時間のルールを繰り返し教育し、意識するようにしました。

 

教育を進めていくと、ルールを守ろうとするドライバーから意見が出てきました。

「途中で連続運転時間の中断をしていたら延着してしまう。それでいいのか?」

という意見です。

 

「必ず事前に会社に電話をしてくれれば、

こちらから荷主に相談するから連続運転時間の中断をしてほしい」

との指示を一貫して出し続けました。

 

するとどうでしょう。

 

帰社した時の点呼場や休憩室で、

今まで聞いたことがなかった内容の会話が増えてきたのです。

 

「今日は〇〇の納品先で7分で作業が終了したけど、

トラックの一周点検をして時間を使って10分にした。

(連続運転時間の中断は1回あたり10分以上必要なため)」

という話です。

 

拘束時間や休息期間、連続運転時間は改善するのに

荷主などの外部関係者の協力が不可欠です。

 

でも、果たしてそうでしょうか?

“自社でできること”は本当にないでしょうか?

 

“自社でできないこと”ばかりに目がいってしまって、

「できること」まで“できない”と思い込んでいることが必ずあります。

 

「自社でできること」。

もっと言えば「自社でできそうなこと」。

そこを突破口に会社の改革を進めていくことが最重要ポイントです。

 

「連続運転時間の遵守」の1点突破は大きな転機となりました。

 

連続運転時間の遵守が改善したら、

同様の手法で1日の拘束時間や休息期間も自然に改善していったのです。

 

たった1つの“良き習慣”からその運送会社は大きく好転し始めたのです。

 

では“たった1つの良き習慣”を

どのようにして身につけていけばよいのでしょうか?

 

冒頭の言葉、マハトマ・ガンディーに再登場していただくことにしましょう。

 

「習慣」が変わると「運命」が変わる。

これには続きがあります。

 

習慣を変えるためには「行動」を変える必要がある。

行動を変えるためには「言葉」を変える必要がある。

言葉を変えるためには「思考」を変える必要がある。

思考を変えるためには「信念」を変える必要がある。

 

そうです。

すべての始まりは、運送会社の社長が“信念”を変えることができるか。

この点にすべてかかっているのです。

 

自分の信念を変えることは容易なことではありません。

 

なぜなら、信念はその人がこれまでの人生を自分なりに感じ、

正しいと解釈してきた考え方の集大成だからです。

 

配車マンが何年も続けてきた配車計画をなかなか変更したがらないのと似ています。

 

ただ、信念を変えざるを得ない状況があります。

危機感をもった時です。

 

このままだと自社はいずれ廃業、倒産したり、労務トラブルや行政処分で大変な事態に発展する。

そう感じた時です。

 

"最悪の時”が信念を変える最善の時でもあります。

 

個人で言えば、大病や失業などで大きな危機感を抱いた時。

運送会社で言えば、経営者が他社の失敗事例や重大事故を起こして危機感を抱いた時です。

 

「あるとき、重大事故を起こし、

営業停止になった運送会社のドライバーの拘束時間の実態を知りました。

自社の現状はどうなっているのかと思い、

初めて拘束時間などの改善基準をチェックした時に驚いた。

早急に改善しなければ自社も営業停止など大変なことになってしまう。

何かあった時では遅すぎるから、今からやろう。」

 

これは、ある運送会社の経営者の方から聞いた話です。

 

この信念から5年。

見事に拘束時間や休息期間、連続運転時間などの改善基準違反が激減しました。

一番多い月でも4件の違反。

行政処分基準では初回違反であれば「警告」で済むレベルです。

 

5年前の1ヶ月350時間超の拘束時間ドライバーが何名もいた時代を

想像できないくらいの改善、いや改革です。

 

まさに経営者の“信念”おそるべし!

 

運送会社の社内体制の改革。

労働時間の改善1つでも会社の体質改善は相当できます。

 

では、賢明なる読者のみなさんは、何から着手するでしょうか?

 

「自社でできること」「自社でできそうなこと」。

これらを書き出し、まずは1点突破で“良き習慣”を身につけましょう。

1つの良き習慣が身につけば、あとは心配ご無用。

次に身につけたい良き習慣が何かが自ずと見えてきます。

 

「人は思考の産物にすぎない。自分が考えたものになる」。

これもガンディーの言葉です。

 

「運送会社は社長の思考の産物にすぎない。社長が考えた会社になる」。

そのように聞こえてきます。

けだし名言ですね。

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

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