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名言に学ぶ運送会社の危機管理(第2回)

物流ニッポン

2016年1月に発生した軽井沢スキーツアーバス転落事故。

ツアーバス会社の社長と元運行管理者が

業務上過失致死傷の疑いで本年6月に書類送検されました。

「大型バスの運転に不慣れなドライバーの教育を怠った」ことが主な理由です。

 

前途有望な多数の大学生の命を奪った事故の原因。

それは、ドライバーの過労や疾病でもなく、バスの不具合でもなく、

なんと「安全教育が不十分」という意外なものとなりました。

 

本年3月からドライバーに対する教育内容が変更されました。

初任運転者に対する15時間以上の座学、20時間以上の添乗指導の義務化もその1つ。

 

規制が強化されることで運送会社は二手に分かれます。

1つ目は、とにかく形式的に実施して記録を残すタイプ。

2つ目は、本当に効果の出る教育を模索するタイプ、です。

 

1つ目のタイプは、

「また規制か。でもやらないと行政処分を受けるから仕方ないか」

と規制を押し付けられた面倒臭いものと捉え、いやいや対応する運送会社。

 

2つ目のタイプは、

「せっかく教育時間が長くなるのなら、何とか効果が出る教育をしよう」

と経営者自身が工夫をする運送会社。

 

当然、教育は行う側も受ける側も面倒で面白くなさそうに思えるでしょう。

 

ただ世の中不思議なもので、

「あの人の話は面白く、時間が経つのが早い」と言われるような講義や授業があるのです。

 

何が違うのでしょうか?

 

教育のポイントは受けた側の“記憶”に残るかどうか。

ココにかかっていると思います。

では、どういう時に、人は記憶しようとするのか?

 

記憶の仕組みを知ることが、

ドライバーの安全教育が成功するかどうかの大きなカギになります。

 

例えば、

真面目な学生であればテストで高得点を取るために知識を記憶します。

真面目でなくても落第したくなければ、それなりの知識を記憶してテストに臨むでしょう。

落第、という将来、不快な状態に陥りたくない!と思うからでしょう。

 

例えば、

病人であれば、医師のアドバイス(知識)を記憶して、実践します。

死、という将来の不安、恐怖を避けたいと思うからです。

 

つまるところ、人は

「自分の未来が良くなること」、

「自分の未来が危険な状態にならないこと」

に役立つことを“記憶”するようにできています。

この2つのことであれば、

学校の先生や医者などの第三者に強制されなくても真剣に話を聞くのです。

 

『食欲なくして食べることが健康に害があるように、欲望を伴わない勉強は記憶をそこない、

記憶したことを保存しない。』(レオナルド・ダ・ヴィンチ)。

 

「教育(勉強)」に「欲望」とは、まさに盲点!

 

“欲望”を感じない教育ではドライバーの記憶に残らない。

記憶に残らない=教育の効果はない、ということです。

 

これからのドライバの教育も「欲望」を活用するべし。

「自分の未来が良くなること」、

「自分の未来が危険な状態にならないこと」という2大欲望をです。

 

ドライバーの頭の中に潜入してみてください。

彼らは何を「不快、不安」に思い、何を「快適、安心」と思っているのでしょうか?

 

ドライバー教育の1つ「健康管理の重要性」を例に考えてみることにします。

 

健康診断結果が「異常あり(要検査、要精密検査、要治療)」と診断されたドライバーに

再検査を受けさせたいとします。

再検査の要請をしてもなかなか受診しないドライバーがいたとします。

 

あなたなら、どう教育しますか?

 

指導内容として主に3つあります。

 

1つ目は

「法律で決められているから再検査を受けなさい!」という義務押し付け型。

 

2つ目は

「運転中の発作による事故で監査が入り、車両停止などの行政処分を受けたら、

同僚のトラックも停止されるよ」という罰と同僚に迷惑かける型。

 

3つ目は

「重大な病気でドライバー業務不能になったら大変だぞ」という大病リスク煽り型。

 

上記2、3は「不快、不安な状況になりたくない」という「マイナスの欲望」を刺激しています。

 

不快、不安のようなマイナスの欲望を煽るのは効果が高い方法です。

しかし実は副作用もあります。

 

麻痺です。

いつも同じ不安を煽る話を聞かされていると、ドライバーも回を重ねるごとに馴れて、

麻痺し、教育効果は下がります。

 

そうなる前に「プラスの欲望」を刺激する対策を講じなければなりません。

 

例えば、健康診断結果が異常なしのドライバーへの評価手当。

また再検査、通院をしっかり行っているドライバーへの評価手当など。

 

プラスとマイナスの欲望。

2つの欲望を刺激することが安全教育では肝になります。

 

人は“自分の将来”のために役立つことを“記憶”しようとします。

記憶されれば、その知識や情報が活用される可能性は高くなります。

 

教育とは“記憶に残る話”ができるかどうかと同じです。

 

『食欲なくして食べることが健康に害があるように、

欲望を伴わない勉強は記憶をそこない、記憶したことを保存しない。』

 

「欲望」と「記憶」の仕組みを知るものが“教育”を制する。

 

ルネサンス期の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉は

500年近く経った今でも、効果的な教育方法のヒントを私たちに与えてくれますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

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