メディア連載一覧

名言に学ぶ運送会社の危機管理(第4回)

物流ニッポン

「第一線で“長く”活躍している人は(成功したときに)

新たなハングリー精神を見つけられたんだと思う」

 

“ルパン三世のテーマ”で有名な作曲家、大野雄二氏の言葉です。

 

アスリートでも芸術家でも経営者でも、一生懸命に努力を重ね、工夫を重ねていけば、

ある程度の成功を手にすることはできるようになります。

ただ “短命”で終わる人が多いです。

 

なぜ成功を“継続”できる人と短命で終わってしまう人がいるのでしょうか?

 

「成功したときにハングリー精神を保てるか」

大野雄二氏は語ります。

「正確にはハングリーの種類を変えられるか」

「ハングリーの部分が“金”とか“名誉”だけの人はそこで終わってしまうから長続きしない」

さすがは長年に渡り、第一線で活躍してきたアーティストの言葉です。

 

人のモチベーションは“金”や“名誉”だけでは長くは持たない。

これが真実であり、人生を幸せに過ごせるかどうかの分かれ目でもありそうです。

 

運送会社の安全管理の1つ、健康管理について考えてみましょう。

 

レベル1の取り組みは、

最低限、法律ギリギリ、健康診断を受診させることだけです。

役所がうるさいから、という消極的な動機です。

 

レベル2の取り組みは、

健康診断結果で“異常あり”のドライバーに再検査を受診させていることです。

レベル1に比べると少し進歩しています。

 

レベル3の取り組みは、

再検査による医師の意見に基づき、就業上の措置まで検討、実施していること。

医師の意見を聴き、労働時間の短縮や休日の増加、長距離運行の削減など

かなりきめ細かい取り組みができている状態です。

 

レベル4の取り組みは、

運転に支障を及ぼすおそれのある病気の前兆、自覚症状をドライバーに確認していること。

病気を事前に防ぐ内容で、かなり健康管理に力を入れている運送会社といえます。

 

レベル5の取り組みは、

SAS検査や脳MRI、MRA検査や心臓ドッグなどを実施していること。

これは特上の取り組みです。

健康診断ではチェックできないけれど、

運行中に発症したら重大事故につながるかねない疾病についての予防措置です。

 

たかが健康管理ですが、レベル1とレベル5では月とスッポンです。

どうして同じ運送会社同士でこんなにも差が出るのでしょうか?

 

実は、この違いが「ハングリーの種類」の違いなのです。

自分のお金や名誉(見栄)のために経営しているのか。

自分のグレードを高める(成長する)ために経営しているかの違いです。

 

創業時や軌道に乗るまでは、

自分の“お金”や“名誉(見栄)”を目的にガムシャラになるのは誰も似たり寄ったり。

運命の分かれ目は、ちょっと成功した時です。

 

「メジャーリーグの試合を見ていても、いいプレイや面白いプレイがあったら、

それを“音楽にたとえたら”こんな感じだろうなって考えている」

大野雄二氏の作曲家としての“普段の姿勢”です。

 

この“音楽にたとえたら”という姿勢こそが、まさにプロ魂!

運送会社の社長なら“運送経営”にたとえたら、と

何も見ても、食べても、寝ても覚めても四六時中考えていればプロ経営者です。

 

ドライバー不足がかつてないほど深刻な状況になっています。

そうはいっても集まるところには集まっています。

給料が同業他社より高い、労働時間が長くない、休日が多い、など理由はいろいろです。

 

でも、忘れていけないのが運送会社とドライバーとの信頼関係が築けているかどうかです。

 

人はロボットにあらず。

感情によってやる気になったり、落ち込んだりします。

社長や上司から信頼されていると感じれば、この会社に居続けようと思います。

大事にされていると感じれば、そう簡単に辞めたりしません。

 

健康管理もドライバーとの良好な信頼関係を築くための1つのツールです。

ドライバー募集という観点でも、かなり重要な取り組みとなります。

 

「嫁にこの運送会社ならいいんじゃない、と言われました」

「母親がこの運送会社ならよさそうね、と話してました」

意外なことにドライバーの身内、特に奥様、母親から信頼されるかどうかが

求人募集の成否を左右します。

 

実際、男性ならば経験があると思いますが、

スーツにしろ、マンションにしろ、奥様や彼女の意見に従って買うことが多くないでしょうか?

 

求人もしかり。

健康管理をどのレベルで取り組むか。

この点だけを見てもドライバーの奥様、彼女、母親の印象(信頼)は相当違うはずです。

 

法律ギリギリの健康診断受診だけの運送会社と

SAS検査や脳MRIなどの“法定外”の検査まで実施する運送会社。

どちらの運送会社がドライバーを大切にしようとしているかは火を見るよりも明らかです。

 

ドライバーが大事と口では言いながら、ドライバーに手を差し伸べるのではなく、

両手はお金を握りしめている経営者がいかに多いことか!

 

「第一線で“長く”活躍している人は(成功したときに)

新たなハングリー精神を見つけられたんだと思う」

 

賢明なる読者のあなた。

ハングリー精神は健在でしょうか?

 

金や名誉だけが充満して、成長はおろか腐臭が漂っていないでしょうか?

それとも自己のグレードを上げるための闘志が残っているでしょうか?

自己のグレードを上げるとは、経営者であれば、自分だけでなく、

管理者やドライバーを大切にできる利他の精神を養うことです。

 

健康管理1つで、ドライバーのみならず、

その奥様や母親、彼女の心を奪う、一流の盗人になることはできるのです。

 

同じ盗人でも、人の心をワシづかみにするくらいの大ドロボーになるための

ハングリー精神を常に持ち続けたいものですね。

 

銭形のとっつぁんがやって来る前に、今回はこれにて退散!

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

お問い合わせ・ご相談はお気軽にご連絡ください
052-212-8708
お問い合わせ