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運送会社の危機管理は乗務基準違反の削減努力をすること

物流ニッポン

本年1月に北海道の事業者に30日間の営業停止処分をされたのを皮切りに、

8月にも同様の行政処分事例が中部地区で発生しました。

 

2件に共通する監査のキッカケとは?

 

それは「労働局から国土交通省への通報」。

 

労働局の調査が入る。

是正勧告書が交付される。

改善報告書を提出する。

労働局から国土交通省へ通報される。

国土交通省の抜き打ち監査が入る。

 

これが、今までの監査までの流れでした。

 

今までの乗務基準違反の改善の最後のチャンスは

「労働局の調査から国土交通省の抜き打ち監査までの期間」だったのです。

 

この期間中に、乗務基準違反を“一定数以上減らす”ことができれば

30日間の営業停止にならずに済んだからです。

 

“一定数以上減らす”とは、次の2つのどちらかの改善をすることです。

 

1つ目は、乗務基準違反31件以上のドライバーを2名以下にすること。

2つ目は、同じ営業所所属のドライバーの拘束時間違反数を半数以下にすること。

 

冒頭の2事業者とも、この“最後の救済期間”を知らずに

乗務基準違反を放置したことが最大の敗因でした。

 

ところが、本年9月から監査手順が少し改正されます。

労働局から国土交通省に通報されるところまでは同じです。

変わったのは、通報後の流れです。

 

今までは労働局が通報後、いきなり国土交通省の抜き打ち監査が実施されていました。

変更後は、まず適正化実施機関が巡回指導に入ることになります。

 

この巡回指導では通常とは違い、乗務基準違反のみをチェックされます。

違反があれば、1、2ヶ月程度の改善期間を設定して、改善報告をするように指導されます。

 

晴れて改善されればOK!(適)となり、その結果内容が国土交通省に通知されます。

巡回指導結果が「適」であれば原則、国土交通省の監査は不要になります。

 

一方、巡回指導結果が「否」であれば、その旨が国土交通省に通知されます。

当然、今度は国土交通省の抜き打ち監査が実施されることになります。

 

監査手順改正後のポイント

 

それは

“巡回指導後3ヶ月前後の期間”に乗務基準違反を一定数以上削減できるか、

です。

 

今回の改正で行政処分が緩和された、と勘違いしている経営者もいるようです。

巡回指導が入ってからでも乗務基準違反の改善は間に合う、という勘違いです。

 

しかし、誤解をしてはいけないのです。

今回の改正は、あくまで

“労働局から国土交通省に通報が入った時”の取り決めです。

 

盲点は、重大事故や悪質違反を起こした時は、対象外、ということ

 

巡回指導を介さずに、いきなり国土交通省の抜き打ち監査が実施されるのです。

 

その時、著しい乗務基準違反が発覚したら万事休す!

30日間の営業停止処分になってしまいます。

 

「主な乗務基準」の内容

  1. 1ヶ月の総拘束時間(原則293時間以内、例外320時間以内)
  2. 1日の最大拘束時間(16時間)
  3. 1週の拘束時間(1日15時間超2回以下)
  4. 1日の休息期間(連続8時間)
  5. 連続運転時間(4時間運転で30分以上の休憩等)
  6. 1日の運転時間(2日平均9時間以下)
  7. 1週の運転時間(2週平均44時間以下)

 

改善手順1

ドライバーごとに1ヶ月間の7つの違反件数を把握すること。

 

ただ、言うは易し、行うは難し。

違反件数を正しく把握するのに、まず数ヶ月はかかると思って下さい。

 

改善手順2

31件以上のドライバーの人数を確認することです。

 

同じ営業所に所属するドライバーで2名以下なら、まずはセーフ。

といっても、行政処分が0、になるわけではありません。

31件以上であれば、車両停止20日の行政処分にはなります。

致命的な行政処分にならない、という意味です。

 

では、もし31件以上の乗務基準違反ドライバーが3名以上いた場合はどうでしょうか?

至急2名以下になるように乗務基準違反の削減をして下さい。

 

もし、3名以下にどうしてもすぐにはできない場合はどうするか?

 

“拘束時間”の違反をしているドライバーの人数を確認します。

至急、同じ営業所に所属するドライバーの拘束時間の違反者数が全体の“半数以下”になるように配車計画を見直して下さい。

 

どんなに安全管理を実施していても、重大事故はいつ起きるか分かりません。

 

結局、基本(法令)に忠実な運送会社は窮地で強いのです。

 

日頃から乗務基準違反の削減努力をすること。

運送会社の危機管理はこれに尽きますね。

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

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