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うちの安全管理は大丈夫!と思い込んでいたら最大級の行政処分!

ひので~す

「死亡事故を起こしていないのに、運送会社が営業停止になるの?」

長時間労働の改善は、特にトラック運送業界にとって最大の課題です。ただ、「できない、できない」と嘆いていても何も解決しません。荷主の協力がないので仕方ない。そう諦めている事業者の方もいるのではないでしょうか。

ところが、この長時間労働は本当に改善しないと、大変な問題に発展するのです。

では一例として、「乗務基準を著しく違反していた」ことで、最大級の行政処分を受けたケースを紹介します。

ケース:労働局から通報を受けた国土交通省が監査を行った結果、乗務基準の著しい違反が発覚した場合

北海道のA運送会社は、労働局の調査を受けました。労働局は乗務基準違反を見つけたことから、国土交通省にその旨を通報したのです。通報を受けた国土交通省はA運送会社に一般監査に入りました。

「最初はこれほどひどいとは思っていなかった。フタを開けたら大変な違反状態だった」

監査に入った北海道運輸局の監査官のコメントです。

その言葉通り、当初は運輸“支局”の監査だったのを、運輸“局”の監査に格上げしたのです。3回に及ぶ監査の結果「著しい乗務基準の違反」があることが判明したのです。

具体的には、1ヶ月31件以上の乗務基準違反のドライバーが3名以上、全ドライバー70余のうち46名が拘束時間違反をしていたのです。

運送事業者から荷主企業まで広がる「勧告」

本連載で以前お話ししましたが、「著しい乗務基準違反」とは何かを、もう一度確認しておきましょう。

  1. 1ヶ月の乗務基準違反が31件以上のドライバーが3名以上 かつ
  2. 同一営業所所属の全ドライバーの過半数が拘束時間違反

上記1、2を同時に満たした場合が「著しい乗務基準違反」となります。この違反に対する行政処分は何と「30日間の営業停止」です。これが昨年1月に改正された行政処分基準です。今回の事例は“全国初”となったわけです。

長時間労働はトラック運送業経営、特に長距離運行をメインにしている運送会社には頭の痛い問題です。

「俺たちだけではどうにもならない問題もあるのに!」

そんな声もむなしく、現実は厳しく「NO!」のレッドカードを突きつけられたのです。

ただ、運送会社だけでは解決できない問題、例えば待ち時間の長時間化や無理な着時間の指定など“荷主企業に原因”があることも多いのも事実です。

今回の行政処分では、元請け運送会社に対して「警告書」を発令しました。

これは法令違反をした運送会社だけではその違反を改善できない場合で、荷主の関与が認められる場合に発令されるものです。

今回発令されたことで、3年以内に再び同じ運送会社が乗務基準違反をして行政処分を受けることになると、その時は「勧告」が元請運送会社に対して発令されます。

この勧告は、一般的に荷主の「社名公表」がされ、どのように法令違反に関与していたかまで報道されます。元請け運送会社にとっても大きなダメージを受けることになります。

“うちの会社は大丈夫”という思い込みが落とし穴

このように、法令違反を犯した運送会社だけでなく、元請け運送会社にまで国土交通省の監視の目が広がったのは今回の1つの成果ではないでしょうか?

本来であれば直接、真の荷主まで「勧告」が行き届けば良いのですが、管轄行政庁が経済産業省ということもあり、まだ道のりは険しいです。

ただ、今回のようにまず元請け運送会社にプレッシャーをかけることで、間接的にでも真の荷主にもその情報が伝わることは意味のあることです。

まさか、国土交通省も重大事故を起こしていないのだから、30日間の営業停止処分などしないだろう・・。この甘い思い込みが、ある日ある時、会社をひん死の状態に追い込むことになるのです。やはり、安全管理は“思い込み”が最大の敵です。

いますぐ、自社のドライバーの1ヶ月の乗務基準違反件数をチェックしてみましょう!

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

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