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“血圧計”で本当に分かるもの

ドライバーの健康管理

「2万と30万円の血圧計のどっちを選んだら良いか悩んでいます。」

こんな相談がありました。

血圧計もピンキリ。
1、2万円前後のものから
医療現場で使用している30万円前後の本格的なものまであります。

法的にいえば、なくても何ら問題はありません。
ただ1、2万円のものでも“ない”よりはマシ。

では、なぜ冒頭の相談があったのでしょうか?

全日本トラック協会の補助金対象になったからです。

ただ最大5万円までの補助。
しかも対象機種は「医療用」に限定されたため20万円超のものばかり。
補助の割合が少ないための迷いです。

ここで参考になるのが「アルコールチェッカー」が注目を浴びた時のことです。

飲酒運転による死亡事故が社会問題になった時、すぐには義務化になりませんでした。
まずは“推奨”。
飲酒運転を予防するために、乗務前点呼時にアルコールチェッカーで確認しましょう。
ここからスタートでした。
それが数年で“義務化”に。

ところが義務化になったまではよかったのですが、機種指定はナシ。
数千円のものでも、数十万円のものでは何でもOK!という状況になりました。

おかげで、本当に正確な数値が検出されるのかわからない、誰が吹いたのかもわからないものから、
正確な数値や吹いたドライバーの顔写真まで撮影してなりすましを防止するタイプのものまで雲泥の差が生じたのです。

単純コストからいえば、安いもので済ませば得をしたように思えます。
ところがフタを開けると、
意外にも顔写真で確認できる高性能、高価格のアルコールチェッカーを使用している事業者も少なくありません。

飲酒運転による重大事故時の大変な状況を想像しやすいからでしょう。
十数万円の投資は安いと感じたはずです。

同様のことが、今回の血圧計にもいえます。

義務ではないので、そもそも購入する必要はありません。
ココでどう考えるかが運送会社の分かれ道。

仮に点呼時に血圧計による確認が義務化されたとしても、
実際に乗務禁止になるドライバーはほとんどいません。
多くは“条件付き乗務”として、運行中の禁煙や十分な休憩の確保、激しい作業の禁止などの指示を出すにとどまります。

では、何のために血圧計による確認をするのか?

脳疾患などになるリスクを下げ、疾病による運転中の事故を減らすこと。
これは最低ラインです。

できるだけ長い期間、健康にドライバーが働くことができる環境を整えること。
これが運送会社にとっても、ドライバーにとっても、一般市民にとってもハッピーなことだからです。

正確な数値が測定できなければ、測定する意味がありません。
やっている振りなら、数千円のアルコールチェッカーと同じく、1、2万円の血圧計でこと足ります。

先日、ある運送会社の男性社員(40代半ば)が脳梗塞を発症し、半身不随になってしまいました。
原因はやはり高血圧。
降圧剤を服用せず、放置していたのが悪かったようです。
病室で男性は泣きじゃくっていて、とても見ていられない状況だったようです。

30万円の血圧計を高く感じるかどうか。

経営者の実際の行動(何に投資しているか)を見れば、何を考えているのかが分かります。

血圧計で本当に測定できるのは
経営者のドライバーに対する思いやり、なのかもしれませんね。

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

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