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ドライバー不足の運送会社の社長に足りないもの

ドライバーの定着

「うちの会長は40年近く、人から指導されたり、叱責されたことがありませんので」

ある常務さんの話です。
会長、といっても中小企業ですから常務さんの父親です。

同業他社が改善基準違反で営業停止になっても
「うちは今まで営業停止になったことがないから大丈夫だ」
と意味不明な自信があるらしいのです。

本当に中小企業はむずかしいです。
会社と家族との関係が強いため、どうしても感情的になってしまうからです。

似たようなことが先日放送されたNHKドキュメント番組でも放送されていました。
大雨による水害の話です。
床下浸水になった時点で息子さんが父親に避難するようお願いしたのです。
父親は
「このくらいならまだ大丈夫だ。今まで避難するほどの災害はなかったから俺は避難しない!」
と息子さんの言うことを全く聞かないのです。
結局、胸のあたりまで浸水しながら、命からがら避難することになってしまいました。
下手をしたら、息子さんの命まで失うところでした。

まさに中小企業の社長と後継者(息子さん)との関係も同じです。

タチが悪いのが中途半端に成功している創業社長です。
銀行も保険会社もディーラーも、みんなペコペコします。
社長が何か言えば、「ごもっともです」「さすがですね」のオンパレード。
明らかに間違っていることでも誰も忠告をしてくれません。
たまに勇気ある社員が進言しようものなら大変なことになります。

最終的には一番本音を言えるのが息子さんになります。
意を決して社長に進言します。
「お前は甘い。俺は運送業経営を何十年とやってきたんだ。お前に何がわかるのだ」
おおよそこんな結末でTHE ENDです。

先日公表された自動車事故報告書では
「ドライバーが眠気や体調不良等の申告をしやすい職場づくり」が
過労運転防止のための再発防止策として重要だと報告されています。
経営者、管理者、ドライバーの間の風通しがよくないと重大事故を起こしやすい、ということです。
冒頭の経営者のように「“会長や社長”が威張る職場」では事故やトラブルが絶えません。

大坂なおみが2019年の全豪オープンで優勝しました。
決勝戦でイライラが高じてセカンドセットを落としてファイナルセットにもつれた時、
あることをして調子を取り戻しました。

「相手も素晴らしい選手なのだから勝って当然ではない」
と対戦相手をリスペクトしたのです。
ファイナルセットは再び調子を取り戻し、優勝を勝ち取りました。

創業社長のみならず、中小運送会社の経営者は独り善がりになりがちです。

処方箋は、どんな些細な点でも構わないので
管理者やドライバーのリスペクトできるところを探すことです。

これさえ実行できれば、管理者やドライバーとの風通しが良くなります。
意見を言える風通しの良い職場であれば、
いつも意見が通らなくても社員の満足度は上がり、定着率が高まります。

社員が定着する温かい運送会社なら“安心感”がにじみ出ます。
暖かく安心できる運送会社に求職者が集まります。
ドライバー不足は自ずと解消してしまいますね。

管理者やドライバーのリスペクトできる何かを見つけること。
ドライバー不足の解消はここから始まりますね。

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

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