見た目を変えると運送会社は生まれ変わる!
「私が手がける列車のデザインという仕事は、
車両全体から見れば最後のほんの1%の仕事だと考えています」。
豪華列車「ななつ星in九州」のデザインをした水戸岡鋭治氏の言葉です。
以前、仕事で北九州に電車で出張した際に乗車した「ソニック」。
「名古屋にはない、かっこいいデザインだなぁ」と感心したことがありますが、
ソニックも水戸岡氏のデザインであることを知って納得です。
水戸岡氏いわく、
「車両のデザインをはじめるとき、
製品という意味では車両は99%完成している」とのこと。
“残り1%”のデザイナーの仕事によって、製品から商品に変わるのだそうです。
1%の仕事とは、先頭車両の形や色、座席の座り心地、素材を決めること。
しかし、この1%を侮るなかれ!
一般乗客が五感を使って感じる取る部分だからです。
鉄道マニアや技術者ではない“素人である一般の乗客”が、
理論や理屈ではなく感覚的に「素晴らしかった!」と思ってくれなければ意味がない、
と水戸岡氏は考えているのです。
運送業でいえば、1%のデザインとは何に当たるのでしょうか?
トラックの新しさ、カラー、ロゴマーク、ドライバーのユニフォーム、
営業所のデザインなどが考えられます。
いくらドライバーが素晴らしいサービスをしても、
その“見た目”が今ひとつでは損をしてしまいます。
虎屋の羊羹をコンビニのビニール袋に入れてお土産として渡すようなものです。
彼女の誕生プレゼントとして、
スーパーのビニール袋に入れて指輪を渡せば、悲しい結果が訪れるのは時間の問題!
こんな馬鹿なマネはしないはずの運送会社の経営者が、
こと自社の話になると途端に感覚が鈍ってしまうから不思議です。
荷主も街ゆく一般人も、はたまたこれからドライバーになりたいと思っている若者だって、
まずは“見た目”から判断します。
ダサいトラック、ダサいユニフォーム、ダサい事務所、ダサい格好をした経営者。
すべてNG!です。
“見た目”は求人、荷主の評価、経営者自身やドライバーのモチベーションに
計り知れない影響を与えます。
水戸岡氏いわく、
「人は、まわりの環境に影響を受けるものです。
質の高い空間で過ごすと、それにふさわしい姿であろうとします」。
美術館に行けば、美術館にふさわしい服装、態度をとるのが人間というものです。
“画竜点睛を欠く”とは、残り1%の業務を忘れたことをいいます。
トラック、ユニフォーム、事務所、経営者の身なりというステージを用意すること。
これこそが運送会社の社長がやるべき“残り1%”の重要業務といえます。
デザイン(見た目)を軽視する経営者は生き残れない時代になりますね。
記事を書いた人
和田康宏トラック運送業専門コンサルタント
1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。