マンネリ化した安全教育は危険な道への序章!
「安全な道に驚きはない」。
今年99歳を迎えてなお、旺盛な創作意欲で活動している日本画家、堀文子氏の言葉です。
「驚き続けるために、私はいつも空っぽでなければならない。
過ぎたことを忘れ、過去の業績に頼らず出来上がったものをこわし、
初めて迎える今日に全身を傾けたい」。
堀氏はそう言い切ります。
どうやら“驚き”が人生を充実させるキーワードのようです。
誰でも前回と違うこと、昨日と違うことをすれば失敗します。
しかし、失敗して驚くことで、今まで知らなかったことを知ることができます。
「安全な道」とは、毎回、同じ方法で改善をしない姿勢、
過去の成功手法をなんら疑うことなく、漫然と行う姿勢を指します。
これは何も芸術の道だけではありません。
皮肉なもので、運送会社の「安全管理」自体も、安全な道ばかりを選んでいると、
安全をキープできなくなります。
いつもと同じ内容の安全教育を、同じ手法で繰り返せば、
ほとんどのドライバーが興味を失い、ただ出席するだけ、
安全教育記録を残すための建前教育に成り下がります。
やはり、本当の意味で有効な安全教育をドライバーに受けてもらうためには、
運送会社側が工夫を積み重ねていくより他ありません。
外部機関に教育を委託することも、たまには効果があっても、いずれマンネリ化します。
しょせん、外部機関が行う教育は「フリーサイズ」の教育。
なんとなくどの運送会社にも役立ちそうですが、自社にジャストフィットしていません。
ドライバーからすると「ピン!」ときません。
“自社で実際にあったこと”と“マスコミで騒がれている事故や違反などの不祥事”が、
他人事でないと感じさせる工夫が最重要ポイントです。
この点を踏まえて、社長や管理者が“時間を割いて”考えた教育内容なら、自ずと熱も入るでしょう。
教える側の“熱”は必ず聞く側に伝染します。
他人は自分を写す鏡。
ドライバーが前のめりに聞かないような教育は、
社長、管理者側の熱の低さをドライバーに見透かされた、と反省しましょう。
お役人さんが作った安全教育資料はお役人さんに伝わる言葉で作られています。
お役人さん言葉を“ドライバーに伝わる言葉”に翻訳することが不可欠です。
ドライバーに伝わる言葉は、
普段ドライバーと接している管理者や社長が一番詳しいはず。
教育は第三者である他人に任せられない理由がココにあります。
社長や管理者の“熱意”を他人からお金で買うことは不可能!
「どんなに下手でもいい。自分らしく生きたい」
白寿の画家の言葉は私たちを励ましてくれます。
安全教育も同じ。
はじめから上手にやろうとしなくても大丈夫。
「今回はちょっと教え方を変えてみよう!」
その積み重ねこそ、安全な道(マンネリの罠)に引っかからない方法です。
安全管理の鮮度を保つために、安全な道を“選ばない”。
人生も経営も、安全な道こそ、一番危険な選択だということですね。
記事を書いた人
和田康宏トラック運送業専門コンサルタント
1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。