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短くなるけど増える行政処分

国土交通省の監査

「車両停止なんて怖くない。」
これまでの運送業界の常識が覆ります。

2018年7月1日施行の改正行政処分基準の話です。

改正前の行政処分基準では「車両停止」処分とは名ばかり。
1、2台、多くても3台くらいが20日前後停止されるだけの、何ともゆるい行政処分でした。

ところが、改正後はそんなに甘くはなさそうです。

例えば、31両配置の営業所が90日車の車両停止処分を受けるケースで考えてみましょう。

改正前なら、3両、30日間の車両停止で済みます。
改正後は、9両、10日間の車両停止になってしまいます。

“同時車両停止割合”でみると、改正前が配置車両数の約10%、改正後は約29%。
3倍近くも“同時に”停止される車両割合に開きがあることがわかります。

車両停止期間が短くなっても、
同時に停止される車両数が多い方が、運送会社としては経営上厳しいことが多いはずです。

例題に出した「90日車」は極端ではないか?
そう疑問に感じられた方も多いかもしれません。

以前の連載でお話しいたしましたが、少しだけ復習しましょう。

乗務時間等告示(拘束時間や休息期間、連続運転時間など)の違反件数が
1ヶ月16件以上で、しかも1ヶ月の拘束時間が293時間超のケース。

長距離運行の運送事業者で多々あるケースですが、
これだけの違反で「30日車」の行政処分となります。

さらに、今回の行政処分基準改正の影の主役。
それが「改ざん、不実記載」に対する行政処分です。

“改ざん”については、ジミー大西ではありませんが
「お前(某省庁)もがんばれよ!」、
そう言いたい運送経営者も多いことでしょう。

話を戻します。
“改ざん、不実記載”は現行の30日車から「60日車」に引き上げられました。

行政処分を免れるため、軽くするために
改ざん、不実記載をするワースト5の書類とは何でしょう?

点呼記録、乗務記録、運行記録(タコグラフ)、教育記録、定期点検整備記録の5つです。

「やったことにしよう」、
「働いていなかったことにしよう」、
「違う人が乗務したことにしよう」、
悪魔が囁きかけてくる法的書類ばかりです。

監査時に監査官に指摘されるのは当然として、もっと面倒なことも考えられます。

辞めたドライバーが腹いせに内部告発するケースです。
「改ざん、不実記載」の行政処分が重くなったことは、いずれドライバーの耳にも入るからです。

本当に対面点呼をやっていなかったら。
本当に安全教育をやっていなかったら。
これら2つの改ざん、不実記載で「120日車」の行政処分になってしまいます。
例題の90日車は別段、極端なケースではありません。

「未払い残業代」が、近年の辞めたドライバーの腹いせワースト1。
今後は「改ざん、不実記載」の運輸局への通報。
これが新手のドライバーの腹いせになるかもしれません。

実際は未実施なのに「対面」点呼と記載していないか?
実際は出席していないドライバーを「教育記録」の出席者に記載していないか?

ウソは重い行政処分のはじまり。

今日までよかったやり方が明日には通用しないのが法令改正です。
自社の安全管理の状況を再度チェックしてみましょう。

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

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