コラム一覧

できそうなことに挑戦するために、できることから始めよう

経営者スピリッツ

「入社3ヶ月のドライバーが急性心筋梗塞で亡くなりました」。
ある運送会社の社長からの相談です。

積み卸し先で気分が悪くなり、病院に搬送されましたが亡くなったようです。
入社後の勤務時間を調査したところ、
3ヶ月すべて、1ヶ月320時間を超える拘束時間でした。

「前職も、かなり長時間労働だったようなんですが、それでもウチに責任がありますか?」

そう思う気持ちは理解できます。
ただ、労災認定されるかどうかは、
疾病発症前2〜6ヶ月の各1ヶ月平均の時間外労働時間が80時間超であることが1つの目安になっています。
2、3、4、5、6ヶ月平均の“いずれか1つ”でも
1ヶ月80時間超であれば、労災認定される可能性が高くなります。

実際の時間外労働時間を調べてみると、
明らかに2ヶ月平均、3ヶ月平均ともに1ヶ月80時間を超えていました。

ほぼ間違いなく労災認定されるケースといえます。
36協定で定めた1ヶ月の最大時間外労働時間も超えていますので、書類送検される可能性も大です。

すでに労基署の調査が入っており、
時間外労働時間の上限と改善基準(1ヶ月の最大拘束時間293時間以内、1日の最大拘束時間16時間以内等)を守るよう
是正勧告書も交付されています。

さらに業務中に疾病を発症し、運転が継続できなくなりましたので“重大事故”案件でもあります。
運輸局の監査も、いずれ入ることになるでしょう。

なかなか大変な状況ではあります。
それでも、やるべきことはハッキリしました。
改善基準の違反件数を減らしていくことです。

聞くところによると、ある運送会社の下請け業務が問題とのこと。
傭車を見つけるのが難しいため、結局、自社ドライバーに無理をさせているのです。
元請運送会社も知っているはずなのですが、そのことを一緒になって改善する気がないのです。
元請運送会社だけはクリーンな運行時間というわけですから、タチが悪いです。

改正貨物自動車運送事業法が施行されれば、
真の荷主や元請運送会社に対してもプレッシャーがかかります。
少しずつではありますが、「下請け運送会社の改善基準違反は知らぬ存ぜぬ」は通用しなくなります。

ただ、それでも下請運送会社としても、自ら改善基準違反を減らす取り組みに着手する必要があります。

まず「連続運転時間」の違反だけでもいいです。
すべてのドライバー「違反ゼロ」を目指しましょう。

たかが「連続運転時間」かもしれません。
それでも、わずか1つの法令違反でも「守る」という社内風土を作り上げていくことが非常に大事です。

ドライバーの死亡、労基署の調査、運輸局の監査。
考えれば考えるほど不安ばかりが募って、何から手をつけたら良いか迷います。
まだ起きてもいないことに気を病む前に、社長として“今やれること”に集中していくことです。

まず「できること」から始める。
次に「できそうなこと」に挑戦する。
運送業経営も人生も、これに尽きますね。

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

お問い合わせ・ご相談はお気軽にご連絡ください
052-212-8708
お問い合わせ 資料ダウンロード