高血圧ドライバーにはご用心!
「今まで作業中にはあったのですが、
運転中には発作が起きていないので、大丈夫でしょうか?」
ある講演会でのご質問です。
“てんかんの持病のあるドライバー”を雇用している、とのことです。
会場は一瞬、ざわめきや苦笑する声が広がりました。
しかし、本当は誰も笑えない話なのではないでしょうか?
持病が、たまたま「てんかん」という、極めて分かりやすい疾病であったため、
職業ドライバーとして雇い続けることが難しいことが容易に判断できただけです。
例えば、高血圧の持病をもつドライバーの扱いはどうでしょう?
高血圧のドライバーは主に3つのケースに分かれます。
1.高血圧で降圧剤を服用して正常値のドライバー。
2.高血圧で降圧剤を服用して異常値のドライバー。
3.高血圧にもかかわらず、治療をしていないドライバー。
果たして、上記1〜3のドライバーの乗務の可否は如何!
高血圧の持病をもつドライバー1つをとってみても、
乗務の可否の判断は意外に難しいです。
上記3の“高血圧にもかかわらず、
治療をしていないドライバー”については直ちに再検査を受診させ、
しかるべき治療を受けるよう指導すべきことは言うまでもありません。
上記2の“高血圧で降圧剤を服用して異常値のドライバー”については、
まず主治医に対して乗務の可否に関する意見を聴く必要があります。
その上で、産業医の意見を聴くのがベスト。
主治医は治療のプロではありますが、
業務と疾病に関する労働安全衛生のプロではないからです。
それでは、上記1の“高血圧で降圧剤を服用して正常値のドライバー”についてはどうでしょう?
一見問題なさそうに見えますが、実はそうでもないのです。
あくまでも服薬のおかげで血圧を正常値に保っているだけ、ということがポイントです。
降圧剤は服用を急に中止すると、血圧が急上昇し、
脳卒中や心筋梗塞などを発症する場合があると一般的には言われております。
点呼時に“服用の有無の確認”はとても重要になります。
ただ、服用の有無の確認の仕方も一工夫すべきです。
たんに
「薬を正しく服用していますか?」
と質問して
「しっかりと服用しています」
のドライバーからの回答だけで乗務OK!
とするのではチェックが甘過ぎます。
やはり、通院していることがわかる「領収書」や「薬情報の記載された書類」を
点呼時に提示させて確認することが望まれます。
もっといえば、服用を継続しなければならないドライバーについては、
薬が何日分支給されているのかを会社側で把握しておけば、
次回の通院日時の期限が把握できます。
スマートフォンやパソコンのダイアリー機能を活用すれば、
その時期に画面表示やアラームが鳴ったりして知らせてくれ、
会社も適切な指導をすることができるのです。
点呼時に、
「もうそろそろ診察にいく時期ですね。
診察を受けたら必ず領収書や薬情報の書類を持ってきて下さい。」
と具体的な指示ができます。
運送会社の健康管理は、軽井沢でのスキーツアーバス事故を大きな転機を迎えています。
よりきめ細かな管理、対策を今後求められるようになります。
全ドライバーに対する“持病”と“通院状況”を把握すること。
運送会社の健康管理はココからスタートですね。
記事を書いた人
和田康宏トラック運送業専門コンサルタント
1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。