過去3年間まで遡った過労死裁判!
“発症前6ヶ月間”。
この常識が通用しなくなりました。
過労死の認定基準の話です。
先日、ある大手企業の元男性社員(死亡当時33歳)が
虚血性心不全で死亡したのは
過重労働が原因だったとして、
第一審につづき第二審でも過労死と認定されました。
この判決はこれまでの常識とは違う過労死判断をした注目すべきものです。
心臓疾患や脳疾患が発症した場合、
これまでは厚生労働省が策定した過労死認定基準に基づき
“発症前6ヶ月間”の時間外労働時間や業務による精神的負荷の程度に
重点が置かれて判断されていました。
ところが今回の裁判では、
発症前“36ヶ月”まで遡って過重労働の状況を審議されたのです。
なぜ36ヶ月まで遡ったのか?
その理由の1つ。
それは発症前6ヶ月間の1ヶ月平均の時間外労働時間が
“45時間超”だったからです。
発症前2〜6ヶ月平均80時間超が過労死ラインとされています。
ただし注意しなければならないのは、
45時間を超えると業務と疾病の因果関係が“強くなる”と考えられていることです。
今回の裁判では、発症前6ヶ月よりも“前”の期間の
過重労働の状況を確認することになったのです。
その結果、発症前36ヶ月前から7ヶ月前までの30ヶ月間の時間外労働時間は、
100時間超の月が15回、80時間超の月が6回でした。
「21/30」という、
実に全体の7割の月が過労死ラインを超えていたことが判明したのです。
今回の裁判(労基署ではなく)では
心臓疾患や脳疾患による労災認定に関して
1)長時間労働の有無
2)長時間労働の程度
3)業務による精神的負荷の程度
4)発症発症前6ヶ月間の業務の過重性
5)発症前6ヶ月より前の業務の過重性
という手順で判断されました。
発症前6ヶ月間の業務の過重性が判断の基本ではあるが、絶対ではない。
特に発症前6ヶ月間の時間外労働時間の月平均が45時間超の場合には、
それより前の業務の疲労が解消していないと考えられる、ということです。
運送会社の立場で45時間以下は高嶺の花。
現実的な対策としては、
毎月の時間外労働時間を80時間未満に極力抑える努力をすること。
これに尽きます。
毎年11月は「過労死防止啓発月間」です。
“1ヶ月の時間外労働80時間超はブラック企業の始まり”。
こんな情報が巷にあふれてきます。
どこかの鉄道会社のCMのように
「そうだ 労基、行こう。」
とならないように、時間外労働時間の管理は確実に実施しましょう。
記事を書いた人
和田康宏トラック運送業専門コンサルタント
1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。