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ドライバー不足と無縁な運送会社の条件(第4回)

「出戻りドライバーを受け入れるかどうか迷っています」。
こんな相談を受けることがあります。

出戻りドライバーとは、
何らかの事情で退職したにもかかわらず
再び入社してくるドライバーのことです。

社長が迷って相談してくるということは、
何か引っかかっているからでしょう。

前に辞めた理由が問題です。
やむを得ない事情(看病や介護、病気等)であれば、迷わず再雇用します。
問題は、労働条件(給与、労働時間など)が自社よりも良さそうに見えて安易に辞めた場合です。

「やっぱり社長のところがいいです」
一見、社長の心を惑わす言葉です。
言われて悪い気はしません。
「そうか、やっぱり俺のことを信じてくれたんだな」
「今回で懲りて、もうウチの会社で落ち着いて働いてくれるだろう」
そうプラスに解釈しがちです。

問題点は2つ。
このような性格のドライバーが果たして長く続くのか。
辞めずにずっと働いているドライバーはどう感じるか、です。

「出戻りドライバー」とは、
浮気してあわよくば今より良い条件の運送会社へ転職しよう、
と調子よく考えているドライバーのことです。

社長を信じて働き続けているドライバーがどう思うかです。
この点はドライバーの士気にかかわる重要ポイントです。

最も避けたいのは
「ドライバー不足だから社長は妥協したな」と思われることです。

今いるドライバーと辞めたドライバーは必ず連絡を取り合っています。
当初、辞めたドライバーは自分の判断が正しいと信じたいがために
「転職してよかった」と元同僚に言いふらします。
甘い言葉につられて辞めていくドライバーも多少出てきます。

数ヶ月働いていると
「こんな労働環境だったら前の会社のほうがよっぽどよかった」
と後悔しはじめます。

その時です。
「もう一度、戻りたい」と懇願してくるのは。

この時に
「もう新しいドライバーが決まっているから無理だと言っておいてくれよ」
と自社ドライバーに言えるかです。

「やっぱりこの会社を辞めないのが正解だ」
ということを今いるドライバーに教育できる絶好の機会だからです。

ドライバー募集はドライバーが辞めた時にかけるものだと勘違いしている経営者がいます。
ドライバー数が満たされている時こそ、あえて募集するのが重要です。

ドライバーが定着することはとてもよいことです。
ただ、定着すると安心しすぎるのが人間というもの。
安心もすぎると慢心になります。
緊張感がなくなり、サービス品質、輸送品質が下がり始めるのです。
そんな時のドライバー募集です。

ある運送会社で実際にあったことです。
あぐらをかいていたドライバーにとって青天の霹靂。
「えっ、なんで今、ドライバーを募集するんだろう??」
「増車するわけでもないのに、どうして??」
ドライバー間でざわつき始めたのです。

ドライバーの1人が経営者に聞いてきました。
「ドライバー募集をしているんですけど、増車する予定でもあるんですか?」

「別にないよ」と顔色ひとつ変えずに経営者が応えたそうです。

すると面白い現象が起きたのです。
翌日からベテランドライバーがテキパキ動くように大変身したのです。

さらに変化があったのは新たにドライバーを増員した時のことです。
新人ドライバーがやる気満々で、どんどん仕事を覚えていくのです。
仲間の荷物の積み下ろしも手伝っている姿に刺激を受けたのでしょう。
ベテランドライバーも率先して手伝い始めているではありませんか。

これには思わず経営者もニンマリ。

流水腐らず。
新人ドライバーは滞った社内に“いい流れ”を作り出してくれます。

ただ一方で、ドライバー求人広告を見て悲しくなることがあります。
「入社祝い金10万円支給!」
「就職説明会に出席すれば粗品進呈!」
果たしてこの方法でマトモなドライバーが来るのでしょうか?

今いるドライバーからすると腑に落ちません。
「知らない人間にそんなお金を使うくらいなら、どうして社長はもっと俺たちに還元しないんだ」
こんな心の叫びが聞こえてきます。

商売でいうところの常連さんと一見さんの関係と似ています。
一見さんには「初回だけドリンク無料!」としていながら、
常連さんにはそれ以上の大切な扱いをしていない。
まるで“釣った魚に餌はやらない”かのようです。

次の魚を釣ることばかりに頭の中が一杯になって、
大切な常連さんを忘れてしまっています。

常連さん(今いるドライバー)にしっかりと還元していれば、
自ずと口コミを介して応募はくるようになります。

もし来ないとしたら、自社ドライバーに対して何かが不足しているはずです。

会社の凋落は内部告発から始まることが多いです。
内部の人間でなければ分からない内容だからです。

同様に、運送会社のドライバー募集も“内部告白”からスタートです。
実際、先程の事業者では
「ウチ、本当にいい会社だよ。入社できて本当によかったね」
と自社ドライバーが新人ドライバーに話しているのです。
新人ドライバーは先輩からその言葉を聞いてどれだけ
「この会社でよかった」と心から思ったことでしょう。

内部にいるドライバーが話すことが“会社の真実”です。

出戻りドライバーが戻りたくても戻れない運送会社を作ること。
経営者が人生を賭けて挑むだけの価値はありますね。

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

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