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ドライバー不足と無縁な運送会社の条件(第5回)

「とにかくトラックを綺麗に清掃してほしい」。
創業20年超の創業社長がドライバーに語った言葉です。

社長曰く「トラックを綺麗にすることで事故が減る」とのこと。
「わが社の土台になっているのはトラックを綺麗に清掃することにある」と。

「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがあります。
風が吹くと埃が舞う。
埃が目に入り病気になり、盲人が増える。
盲人が増えると三味線弾きが増える。(昔、盲人の職業として多かった)
三味線を作るために猫の皮が必要になる。
猫が捕獲され数が減る。
天敵の猫が減り、ネズミが増える。
ネズミが桶(木製)をかじって壊す。
結果、桶屋が儲かる。
ざっとこんな内容です。
一見関係ない事柄が、意外な事柄の発生に影響を及ぼすことのたとえです。

“トラックを磨けばドライバーが集まる。”
新しい運送業ことわざが生まれました。

トラックを綺麗にしていると、荷主から褒められるようになります。
ドライバーは「いつも綺麗にしておこう!」という気持ちになります。
少しの傷でも気にするようになります。
自ずと運転が丁寧になります。
その結果、事故が少なくなります。
保険料の割引率が高くなり、保険料が大幅に削減します。
ココで第一関門です。

削減した保険料をどうするか。

失敗する社長は私欲に走ります。
成功する社長は違います。
ドライバーの手当、車両購入費用に投資します。
当然、自分に対しても役員報酬の引き上げや乗用車の買い替えもしますが、ドライバーに対する投資も忘れません。
ドライバーの士気が上がります。
「うちの社長はちゃんと自分を評価してくれる」と。
輸送品質、サービス品質がさらに向上します。
荷主の評価が上がります。
荷主の評価が上がることで2つのメリットが生じます。
運賃交渉ができる環境が整うことが1つ目。
「あの運送会社に言われたら、運賃の要望を受け入れる必要がある」と思われるからです。
ただし、ここで第二関門が訪れます。

運賃交渉で成功した場合にどうするか、です。

成果をドライバーに還元できるかどうか。
成果が上がったことをだんまりで、私欲に溺れる社長がなんと多いことか。

荷主の評価が上がることのメリットの2つ目。
労働環境改善の協力要請を受け入れてもらいやすくなることです。

「あの運送会社から言われたら改善する必要がある」と思われるからです。
拘束時間を短縮できるようになります。
時間外労働も80時間未満にすることができるようになります。
ドライバーの労働環境がどんどんよくなります。
ドライバーが辞めなくなります。
定着すれば仕事に慣れたベテランドライバーが増えていきます。
輸送品質を高い状態で保つことができます。
どのドライバーがきても荷主から見てハズレがなくなります。
「ここの運送会社は他とは違う」と荷主が高く評価してくれるようになります。

そのうち配送現場で同業他社ドライバーが自社ドライバーに話しかけてくるようになります。
「よさそうな会社に見えるけど、実際はどうなの?」
自社ドライバーがありのままの労働環境、労働条件を話します。
「うちの会社は労働時間にも気を使ってくれるし、成果が出たら手当を増やしたりしてくれるよ」と。

「一度、面接できないか経営者に確認してほしい」と言われます。
面接にきます。
入社します。
入社後、横乗り指導をされている時に
「うちの会社に入れてよかったね」と先輩ドライバーから言われます。
「この会社でよかったんだ」と新人ドライバーは安心して働いてくれます。
なかなか入社できない運送会社ということと安心して働けることを実感して
プライドをもって働くようになります。
そのため仕事を覚えるのも早くなります。

新人ドライバーの働きぶりに、ベテランドライバーも刺激を受け、
「負けてはいられない」と頑張るようになります。
会社内がよい緊張感で保つことができます。

業界内で評判がよいので、たまに求人広告を出すとたくさんの応募がきます。

「入社祝い金支給!」
「会社説明会の参加者に粗品進呈!」といった変な求人広告をする必要がなくなります。
削減できた求人広告費を手当や賞与などに再投資できるようになります。
ドライバーの士気が再度上がります。
冒頭の社長の言葉を借りれば、“善の循環”です。

事の始まりは、トラックを綺麗にすること。
たった1つのことを20年以上、コツコツやってきたことなのです。

風が吹けば桶屋が儲かる、と同じように
“トラックを磨けばドライバーが集まる”です。
一見、ドライバー募集と関係ないように見えるトラックの洗車。

コツコツ続けていったら、ドライバー募集の成功にたどり着いたのです。
いま、世の中で流行っているドライバー求人方法が
いかに間違っているかということがよくわかります。

検索型広告は湯水のごとくお金を使うことができる大手中堅運送会社にしか効果が出ない方法です。
中小運送会社が大手中堅のマネをしてもドライバー求人はまず成功しません。
オークションで庶民が富豪と競争するようなものです。
大手中堅と違う「強み」を地道にコツコツ作っていく覚悟を決めることです。

「トラックを磨けば」ドライバーが集まる。
あなたの会社では「 」に何が入るでしょうか?
ぜひ、真剣に考えてみましょう。

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

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