「自社の目指すべき理想のドライバー像」の数値化
前回は、ドライバーの品質を考えるポイントとなる「5つの他者の視点」ということをお話しました。
5つの他者とは
- 荷主企業
- 自社
- 役所
- 一般人
- 同僚ドライバー
です。
1つ目の荷主企業の視点。
「もし、あなたが荷主の担当者だったら、どんなドライバーを指名したくなりますか?(又は出入り禁止にしますか?)」
2つ目の自社の視点。
「もし、あなたが配車マンだったら、どんなドライバーだと助かりますか?(又は困りますか?)」
3つ目の役所の視点。
「もし、あなたが国土交通省や厚生労働省の役人だったら、どんなドライバーがいる運送会社なら監査が不要だと思いますか?(又は徹底的に監査しようと思いますか?)」
4つ目の一般人の視点。
「もし、あなたが一般人だったら、どんな運転をするドライバーがいたらお礼や賞賛などの電話を運送会社にいれますか?(警察や国土交通省に苦情の電話を入れますか?)」
5つ目は同僚ドライバーの視点。
「もし、あなたが同僚のドライバーだったら、どんなドライバーと一緒に働きたいですか?(一緒に働きたくないですか?)」
これら10の質問に対して出された意見を“仕分け”する作業に入ります。
仕分けをするために、
「成果」、「力を入れるべき業務」、「身につけるべき知識・技能」、「勤務姿勢」の4つの切り口を使います。
具体的には
「成果」として、事故ゼロ、商品事故ゼロ、クレームゼロ、荷主の賞賛などがあります。
「優先業務」として、エコドライブの徹底、ヒヤリハット活動、適切な荷積み荷下ろし作業、業務改善の提案などがあります。
「知識・技能」として、エコドライブの知識、ヒヤリハットの重要性に関する知識、商品取扱の知識、構内ルールの知識、荷主担当者との接客マナーの知識などがあります。
「勤務態度」として、言葉遣いが丁寧、好印象となる挨拶、配車に協力的、車両の5S、服装の5Sなどがあります。
この4つのいずれかに出された意見を仕分けして下さい。
仕分けが終わったら、次にしなければならないこと。
それは「自社の目指すべき理想のドライバー像」の“数値化”です。
ドライバーの「成果」、「優先業務」、「知識・技能」と「勤務態度」について“数値化”するのです。
よく営業マンや配車マンなら「売上」という数値設定ができるが、ドライバーはデジタコ評価点や事故件数ぐらいしか数値化できない、という質問を受けます。
しかし、もし「自社の目指すべき理想のドライバー像」に関して“数値化”できなければ、ドライバーの能力がどれだけ向上したかを確認できなくなります。
そうなると、一生懸命頑張ったドライバーとそうでないドライバーも同じ評価しかできなくなります。
結果としてドライバー全体のやる気を落とすことになりかねません。
そうならないために「数値化」が絶対に必要なのです。
「成果」「優先業務」「知識・技能」「勤務態度」の4つの内、特に数値化が難しいのが「勤務態度」です。
「成果」は、事故・クレーム・交通違反など数値化しやすいものが多いで分かりやすいです。
「優先業務」も、エコドライブはデジタコの評価点でチェックできますし、安全活動としてのヒヤリハットも月間何件以上提出したか等である程度の数値化が可能です。
「知識・技能」も簡単なテストを実施すれば容易に数値化ができます。
やはり「勤務態度」が最も数値化することが難しいです。
しかし、この「勤務態度」こそ、荷主企業にとって運送会社を評価する際に、一番分かりやすいものなのです。
例えば、挨拶や積込先や積卸先での気配り。
トラブル時の適切な対応。
ミスをしてしまった時の謝罪の仕方など。
荷主企業に最も強い印象を与えるものばかりなのです。
ですから、運送会社は「勤務態度」の向上に力を入れる必要があります。
どんな挨拶をすれば好印象をもってもらえるか。
どんな商品知識をもてば丁寧な荷扱いができるか。
どんな教育をすればトラブル時に適切な対応ができるか等々。
1つ1つポイントを整理して、ドライバーに分かるようにチェックリストを作成し、数値化するのです。
一見“数値化”がムリ!
そう思うことをあえて数値化していくこと。
これは同業他社が諦めて取り組まないことです。
徹底的に取り組めば“同業他社との差別化”ができるのです。
同業他社が諦めてやらない「自社の目指すべき理想のドライバー像」の数値化。
ぜひ、取り組んでみてはいかがでしょうか。
記事を書いた人
和田康宏トラック運送業専門コンサルタント
1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。