「自社の目指すべき理想のドライバー像」を思い描くことができるか
前回は、
同業他社が諦めてやらない「自社の目指すべき理想のドライバー像」の“数値化”に取り組むことの重要性についてでした。
今回はこの数値化が完了した後の作業についてです。
まずは“配点”です。
全体を100点として
「成果」「優先業務」「知識・技能」「勤務態度」の各項目について配点します。
配点をする上での注意点。
それは“自社のドライバーの現状”を考慮することです。
現状の自社ドライバーを眺めて、服装や言葉遣いなどが今一つであれば、背伸びをせずに「勤務態度」のウエイト(配点)を高くする必要があります。
急減速など安全運転ができていない場合や構内トラブルがある場合には、それらの「知識・技能」の配点を高くします。
このように「配点」は、
自社のドライバーに当面どのようになってほしいかの会社のメッセージです。
ドライバー品質向上の重要な経営戦略です。
全体の配点が完了したら、一度数名の管理者(当然社長や専務などを含めても結構です)で各ドライバーの採点をしてみます。
各管理者の採点結果を「一覧表」にし、採点した管理者を全員集めて話し合いをします。
話し合う内容は、採点者の間での“評価のズレ”についてです。
例えば「勤務態度」の評価項目に“挨拶”という内容があったとします。
Aさんは「10点」、Bさんは「4点」、Cさんは「2点」という異なる採点結果になることがあります。
いったい、誰の採点が正しいのでしょう?
実は正解はないのです。
各自が感じた結果だからです。
ただ、このままでは問題があります。
評価する人間によって点数が上がったり、下がったりしてしまうと、ドライバーから不満が出るからです。
評価のズレの解消。
言い換えれば、統一された基準(会社基準)を決めることが必要になります。
“自社”にとって、どんな挨拶を10点満点にするのか、です。
例えば、
10点は「ハキハキと相手の目をみて挨拶ができる」
4点は「声が小さい」
2点は「まったく挨拶できない」
のように丁寧に“評価のズレ”について話し合い、会社統一基準を作成していきます。
この作り上げた統一基準に従って、実際にドライバーごとについて採点していきます。
できれば1人のドライバーについて2人以上の管理者で採点した方がよいでしょう。
但し、ここで注意点があります。
例えば、Aさんが挨拶について6点、Bさんが10点と採点した時に平均して8点にする、ということをやってはいけません。
なぜなら評価されたドライバーに対して適切な説明ができないからです。
その結果、ドライバーとの信頼関係も崩れてしまうからです。
この場合は再度、統一基準について管理者全員で話し合い、ドライバーに説明できるようになるまで評価基準内容を具体化していきます。
以下、すべての評価項目について同様の作業をします。
統一基準に基づいてドライバー全員分の採点が完了したところで、自社の現状を把握します。
例えば、90点以上が全体の5%、80点以上90点未満が20%、70点以上80点未満が50%、60点以上70点未満が15%、60点未満が10%だったとします。
これで、まず自社のドライバーの品質レベルの現状を把握することができます。
そこで、これから1年又は数年かけて
90点以上を10%以上にしたり、
80点以上90点未満を30%以上にする、
などの具体的な自社の“ドライバー成長目標”を決めるのです。
ドライバー1人1人に対して“統一基準”に基づいて、
何をしたら評価点がUPするかを指導していくこと。
これが管理者の重要な業務になります。
裏を返せば、ドライバーをどれだけ成長させることができるかが
“管理者の評価”になるのです。
これがドライバーを成長させながら管理者も成長させる簡単な仕組みです。
実際、中小運送会社で自社のドライバーを数年かけてどのようにするか、という計画を立てているところはほぼ皆無です。
だから、やれば必ず差別化できるのです。
逆にやらなければ、その他大勢の中小運送会社と何ら差別化することができません。
差別化ができなければ、荷主から見ればどこの運送会社も同じ。
ならば、運賃が安い方を選ぶ、ということになるでしょう。
この悪の連鎖を断つためには、
他社が取り組んでいないこと、=“面倒くさくて取り組まないこと”を取り組むしかないのです。
「自社の目指すべき理想のドライバー像」を思い描くことができるか。
すべてはココから始まります。
記事を書いた人
和田康宏トラック運送業専門コンサルタント
1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。