「主な乗務基準」の改善手順や注意点
今回は「主な乗務基準」の改善手順や注意点についてお話いたします。
7つの主な乗務基準
- 1ヶ月の総拘束時間(原則293時間以内、例外320時間以内)
- 1日の最大拘束時間(16時間以下)
- 1週の拘束時間(1日15時間超2回以下)
- 1日の休息期間(連続8時間以上)
- 連続運転時間(4時間運転で30分以上の休憩等)
- 1日の運転時間(2日平均9時間以下)
- 1週の運転時間(2週平均44時間以下)
まず、初めに手をつけるべき乗務基準とは?
5の「連続運転時間」です。
比較的改善に着手しやすいものだからです。
にもかかわらず、なぜ違反をしているのでしょうか?
おそらくドライバーがルールを知らないからです。
もしくは、ドライバーがルールを守ることの重要性に気づいていないからです。
そうなった原因は1つ。
ドライバーに対する指導監督ができていないことです。
“連続運転時間”については違反ゼロが当たり前!
まず経営者、管理者がこの意識を強く持つことが大事です。
例えば、高速走行中、予めどのサービスエリアで休憩するかを指示しておく必要があります。
ドライバーの言い訳No.1は、停車しようと思ったがスペースがなかった、です。
確かにサービスエリアで大型トラックの停車スペースが足りないこともあります。
それでも、複数の休憩候補地を想定して運行することが大切です。
連続運転時間の改善の前兆とは?
乗務後点呼をする際に、
「今日どこどこで連続運転時間の違反をしたかもしれないので確かめたい」
このような発言がドライバーの間で増えてきた時。
その時、連続運転時間の違反は一気に改善に向かいます。
連続運転時間の改善ができるかどうかは、
乗務基準違反全体を改善できるかどうかの分岐点です。
最大限の努力をしましょう。
次に改善すべき乗務基準とは?
4の「1日の休息期間」です。
原則、始業から24時間以内に連続8時間以上の休息期間を確保する必要があります。
ここでもドライバーに“連続8時間”がいかに大切かを教育できるかがまず大事。
問題となるのは、頻繁に休憩や仮眠をとりながら運行するドライバーです。
継ぎはぎの休憩・仮眠時間を合計すると8時間以上になるケース。
今までの習慣が染み付いていて、分かっちゃいるけど止められないようです。
しかし、合計8時間以上では何の意味もありません。
休息期間が確保できていなければ1日の業務が終了したことになりません。
「2日連続勤務」となり、過重労働の一因です。
データを観ると、わずか30分くらい不足して8時間未満となっているケースも多々あります。
原因を究明すると、
単なるドライバーの知識不足、運行計画自体にそもそもムリがある、高速道路の利用を増やせば直るなど、案外、簡単に改善できることもあります。
“休息期間”と表裏一体の「1日の拘束時間」
最低8時間以上の休息期間を確保すること=1日の拘束時間は16時間以下、となります。
1日の休息期間の改善=1日の拘束時間の改善=1ヶ月の拘束時間の改善
とプラスの連鎖をしていきます。
「1日の拘束時間」の注意点
ダブルカウントを忘れないようにすることです。
例えば、今日6:00に始業、20:00に終業した場合、
今日の拘束時間は20:00−6:00=14時間となり、
16時間以下にて一見違反には見えません。
ただ、翌日の始業が3:30となった場合に問題が発生。
ドライバーの1日は“始業から24時間”です。
よって、翌日の3:30〜6:00までの2時間30分を
今日の拘束時間14時間に加算する必要があるのです。
結果、14時間+2時間30分=16時間30分>16時間で違反となってしまうのです。
ダブルカウントは“デジタコ”と“労務管理ソフト”を活用することで難なく解決できます。
1週の拘束時間は、1日の拘束時間の改善と並行して改善することになりますので説明は割愛します。
6、7の運転時間も、1日の拘束時間、休息期間の改善で、自ずと改善されることがほとんどです。
いかがでしょうか?
乗務基準違反の改善。
当たり前ですが、地味にコツコツと、粘り強く実施できるかがポイントです。
“運転中の疲れ”は連続運転時間の中断で緩和されます。
“1日の疲れ”は休息期間の確保で緩和できます。
つまるところ、
乗務基準違反の改善とは
「連続運転時間」と「休息期間」、
この2つの違反件数の削減といっても過言ではありませんね。
記事を書いた人
和田康宏トラック運送業専門コンサルタント
1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。