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ドライバー不足と無縁な運送会社の条件(第1回)

物流ニッポン

「ドライバー募集中!」

先日、高速道路を走行するトラックを見て唖然としてしまいました。
なんと、トラックのボディに冒頭の言葉がペイントされていたからです。

経営者からすると求人広告の1つなのでしょう。
しかしながら、いいようで逆効果になることは世の中、たくさんあります。

求人募集の方法を見れば、求人をどのように経営者が捉えているのかが如実にわかります。

「誰でもいいから応募にきてくれればいい」と考えているのか。
「自社の求める、自社にあったドライバーに来て欲しい」と考えるのか。

求人は求愛と似ています。
「恋人募集中!」とTシャツに印刷しているような人をどう思うか。
まれに、今時シャレが効いていて面白そうな人、と思ってもらえることがあるかもしれません。
しかし、一般的にいって会う人会う人に
「僕と付き合ってくれませんか?」
と声をかける人をどう思うか、という話です。

言われた女性は
「何、この男!最低ね」
と思う人が多いのではないでしょうか?

今の話はこれから入社しようとする人の話です。

逆から眺めてみると更に別のことに気づきます。
「ドライバー募集中!」とペイントされたトラックに乗務しているドライバーの目線です。

「こんなにウチの会社は人気がないのか」
「こんな人気のない会社で働いている自分はなんかカッコ悪いな」
「はたから見たら、自分が他の運送会社に転職できないパッとしないドライバーと映っているんじゃないか」

こんな気持ちになっているかもしれません。

トラックだけではありません。
事務所や駐車場にも「ドライバー募集中!」と常設看板を掲げていたらどうでしょうか?

「俺って、イケてる会社にいるよな」とは絶対に思いません。

いかがでしょうか?
経営者の視点からは、目立つ場所にドライバー募集の広告を出すのは当然ではないかと考えます。

でも、すでに雇われているドライバーの視点、これから面接を受けようとする未来のドライバー視点からは
全く別の景色(運送会社であり、経営者)に見えているのです。

ここまで考えている経営者は少ないでしょう。

でも、ドライバーがいないのは背に腹は変えられない!と頑固に抵抗する経営者もいます。

「隗より始めよ」。
この故事ほど、ドライバー不足の真の問題点に気づかせてくれるものはありません。

念のための意味です。

「隗(かい)という人が、燕(古代中国の国の1つ)の王様に、賢い人材を求めるなら、まず自分のような普通の者を重用しなさい。
そうすればその評判を聞きつけて、私(隗)より賢い人材がどんどん集まってくるでしょう。」
といった意味です。

ドライバー募集というと、ついつい“外”に目が行きがち。

実は“内”側がもっと重要です。

よくあるケースですが、運良く求人広告でドライバーの採用が決まりました。
そこまでは良かったのですが、入社後が問題。

新人ドライバーを受け入れる体制ができていないのです。
あろうことか、あまり会社のことをよく思っていないドライバーを添乗指導の担当者に選任してしまうのです。

そうなると、もう結果は見えています。
入社したばかりのドライバーが、先輩ドライバーから会社の愚痴、不平不満を浴びることによって、どんどん不安が募ります。

それでも帰社後に社長や専務、はたまた前向きなドライバーと会話ができていればよいのです。

そのようなフォローもないまま、数日経過すればどうなるか、想像にかたくありません。

このような事例はいくらでもあります。

やはり、まずは社内体制の改善が先決!
今いるドライバーをどれだけ大切にするか。
ココからです。

なにも全ドライバーに一度に伝わらなくても大丈夫です。
まずは1人、2人に伝われば御の字。

なぜなら、どんな会社も社員の1、2割の優秀な人間によって売上や社風が成り立っているのですから。

30台前後の運送会社ならわずか2、3名のドライバーが自社に好意的になってくれた時、
その時こそが求人募集をするグッドタイミングです。

好意的になってもらうためには、日頃のコミュニケーションは必須。
どういうことをやってほしいか。
やれたら褒める。
やれなかった時にはどうしたらよかったのかを一緒に考える。
本当にできた時は、賞与や手当、表彰などを行う。
これら地道な取り組みがどうしても必要になります。

でも、一度、強固な関係を築き上げた1、2名のドライバーは会社の強力な味方。
会社のファン、しかも熱いファンです。

このファンに新人ドライバーの添乗指導を含めた教育係を担ってもらえば、どうでしょう?

先ほどの愚痴、不平不満たらたらのドライバーが添乗指導を行う場合と正反対の結果になるのは火を見るより明らか!

カサカサに乾燥した社内風土の上に新しい種を蒔いても芽は出ません。
時間がかかっても、まずは社内風土を潤す作業が最優先。

ドライバー募集は、急がば回れ。
隗より始めよ、ですね。

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

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