メディア連載一覧

運送事業者の優先課題!ドライバーの「過労」と「疾病」の2大リスク(前編)

ひので~す

「健康管理」は定期的な「健康診断」だけでは不足!?

運送業の安全を脅かす2大リスク。それはドライバーの「過労」と「疾病」の問題です。今回は「疾病」についてのお話です。

今年3月上旬に高速バスによる死傷事故が発生しました。サービスエリアに駐車中の大型トラックに高速バスが追突し、バス運転士1名、乗客1名が死亡した事故。事故原因は運転士の健康上の問題の可能性が高いようです。睡眠時無呼吸症候群(SAS)や病気の発作などではないかと報道されています。

事故を起こしたバス会社は運転士に簡易SAS検査を実施しており、今回の事故を起こしたバス運転士が「要経過観察」でしたが、産業医の「業務に支障なし」との意見で運行を継続していました。

既に国土交通省の監査は入っており、「明らかな法令違反は見つからなかった」と報道されています。それでもマスコミにいろいろと叩かれています。今回の事故で運送会社の「健康管理」のむずかしさを改めて思い知らされました。

運送会社として、一体どこまで取組めばよいのか迷うところです。法律では、年1回の健康診断、深夜早朝労働の場合には6ヶ月の健康診断を受診させなければなりません。問題はそこから先。

今後求められてくる「健康管理とは」

  1. 診断結果が「異常あり」のドライバーに対して「再検査」を受診させているか。
  2. 再検査の結果に対する医師の意見により就業上の措置(業務転換、乗務時間の短縮、長距離運行や夜間業務の削減等)を決定しているか。
  3. 点呼時に投薬、通院状況について確認をしているか。
  4. 点呼時に高血圧、心血管系疾患、糖尿病に該当するドライバーや予備軍のドライバーに対して「健康チェック(めまいはないか?息切れはしないか?等々)」をさせているか。
  5. 運転中に体調が悪くなる兆候を感じた場合や実際に体調が悪くなった場合に無理に運転せず、安全な場所にトラックを停車させ、すぐに運行管理者に連絡をすることを教育しているか。

高齢化が進む中「健康管理」の重要性を見なおしてください

実は上記の1、2、4に関しては、たとえ取組みがなされていなくても国土交通省の行政処分を受けることは原則ありません。

では、なぜ上記1〜5の取組みが大切なのでしょうか?

昨年12月に、運転中に急死したドライバーの遺族が勤務先だった運送会社に対して8000万円超の損害賠償を求める訴えを起こしました。

「会社が健康への配慮を怠って、無理な仕事をさせた」

運送会社が訴えられた理由です。いわゆる「安全配慮義務違反」です。残業は月間160時間以上で「過労死」と労基署がすでに「労災認定」をしているのですが、それだけでは遺族が納得できず更に裁判をおこしたのです。

「別の仕事についていれば、もっと子どものそばにいれたと思うんですね」冒頭の裁判を起こした遺族である妻の発言です。一昔前なら「社長に世話になっているからそんなことは言わない」これが半ば常識だったような気がします。今は全く違います。たとえ社長さんと亡くなったドライバーとの間では良好な人間関係を構築していたとしても問題は起こりえるのです。

40代は若手、60代もまだまだいける。これが運送業界の実態です。ドライバーの高齢化はしばらく続きます。「ドライバーの高齢化と健康管理」。バス業界だけでなくトラック運送業界でも当面の優先課題ですね。

記事を書いた人

和田康宏

和田康宏トラック運送業専門コンサルタント

1971年愛知県生まれ。19歳で行政書士試験に合格。
会計事務所勤務後、22歳で行政書士事務所開業。
トラック運送業専門コンサルタントとして20年以上にわたり活躍。
事故時の緊急監査対策、平時の危機管理対策、荷主に指名されるドライバーを育成する仕組み作りなど、運送会社300社超のコンサルティング実績を持つ。
営業停止案件や運輸監査案件に携わった豊富な経験から、どの段階で何を優先し、どのレベルまで改善すべきかを的確に指導できることに定評がある。
「優先順位なき安全管理は徒労に終わる」が持論。
“顧客100%が運送会社”の正真正銘の運送業専門コンサルタントである。
2014年『運送業をしてきてよかった!』をミッションとして、一般社団法人トラック・マネジメント協会を設立、理事長に就任し、活動中。
2代目、3代目のための経営塾、『トラマネ運送塾』も主宰している。

お問い合わせ・ご相談はお気軽にご連絡ください
052-212-8708
お問い合わせ 資料ダウンロード